嘘だろ......



なんで彼女がここに......





大勢の女子の前で生クリームを泡立てさせられていた俺は、何気なく前方を見て言葉を失った


どういうわけかこの教室には早苗がいて


今ちょうど出口から出ようとしている





最っっっ悪だ



いつからいた?


まさかずっと、このドレス姿を見られていた?






俺は思わず「待って!!」とその背中に呼びかける




俺の周りにいた女子たちが、何事かと俺の視線の先を振り返った


「五月くん?」

「どうしたの?」

「五月くんが喋ったー!」

「待ってって?」



女子たちの会話ももはや耳に入ってこない




俺は彼女が振り返ったのを確認すると、生クリームのボウルと泡立て器を机に置く



「あっ!ちょっと五月!?」


警備をしていた辻元が慌てているが、それも無視して急いで黒幕で設営されたバックヤードへと戻った



「あれ、火野なんで戻って来たの」

「ちょっと着替える」

「え!?」

「お前があそこに立ってなきゃ集客どうするんだよ」

「なになに、やんなっちゃったの!?」



クラスの男友達が俺を引き止めようとするが、悪いがそれどころではないのだ


あんな格好をずっと見られていたと思うと、最悪以外の言葉が出てこない



俺は仮設の試着室でささっと制服に着替えると、呆然とする女子たちの前を横切って、彼女の元まで駆けつけた