「おーー揃ったー。もー遅いよ火野くん」



俺が辻元に連れられて教室に入るなり、衣装の準備をしていたらしいクラスメート畑中雛月(ひなづき)にそう声をかけられる



ふにゃりと笑って1ミリも怒っていなさそうな雛月とは裏腹に、絵菜はイライラしながら溜息をついた


「五月だけじゃなくて他の男子たちも総じて逃げ回ってたからね。集めるのが大変大変」



見てみれば確かに、黒板の前には7名の男子が横一列に並べられている




お前らもみんなして逃げたのか......


気の毒に.......


「火野、逃げ切れなくて残念だったな」

「諦めた方がいいぞ」

「お前もここに並べ」




最悪......


俺は同志たちの言葉に覚悟を決めると、彼らの一番端に並んだ




「五月は別に並ばなくていいよ。衣装はもう一番可愛いやつに決まってるから。コイツらは、ほら、今から衣装を決めるために並んでもらってるの」


「は.......?」


辻元の発言に硬直した俺に、他の男子はニヤニヤした視線を向ける



「イケメンも大変だな」

「よかったー一番可愛いのじゃなくて」

「セーフ」



嘘だろ


誰か嘘だって言ってくれ



「はい、姫のドレス。今試着してね」


そう言って手渡されたのは、ピンク色のドレス



というわけで俺は

文化祭では姫をやることになってしまった