「よし、じゃあご飯を入れようかね」
ある程度炒めたところで炊飯器の蓋をあける
パカっと音がして、ご飯のいい匂いがふわりとキッチンに漂った
既に自分が食べて減っているのだが、冷凍するつもりで沢山炊いたのでまだ半分以上が中に残っていた
「ご飯どれくらい入れる?」
「逆にどれくらいいれていい?」
「あー」
質問を質問で返され、そういえば相手は食べ盛りだと気がつく
つい自分基準で考えてしまっていたが、高校生男子ってどれくらい食べるんだ?
「そうだな.....ある分ならいくらでもいいけどね。いつもどれくらい食べるの?」
恐る恐る聞くと、彼はなんでもないような顔をして
「2合」
と答えた
_____2合!?
「そ、そうか.....スゲェ、男子高校生ってやっぱそんぐらい食べるんだ.....。了解。あるある、大丈夫」
つまり全部入れればいいわけだ!
私は泣く泣くしゃもじをガッと炊飯器に突っ込んで豪快にご飯をすくう
「おー、本当に世の高校生はみんなこんなに食べるの?」
ご飯をフライパンに投入しつつ改めてその多さに感嘆した私に
「部活してたらそれくらいは......」
と男子高校生は言った
「おっ、もしかして部活おわり?」
私は再びフライパンに火をかけると視線だけ動かして横を見る
「.....はい」
「それはお腹空いてるね。でもいいね、何部?あ、ご飯ほぐしてもらえる?」
フライパンで炒める係をバトンタッチしつつ、彼は少しの間を開けてから「バスケ」と答えた
「へぇ!高校どこ?」
「東淵ノ宮」
「えっ、バスケ強豪校じゃん!」
東淵ノ宮、通称フチ高はこの辺りでもバスケットボール部とサッカー部が強いことでよく知られている
____そうか
毎日いっぱい運動して、いっぱい食べて
今まさにそうやって育ってるんだ
この子は
そう思うと横にいる男子高校生が、自分には縁がないほど遠くにいて、とても神聖で尊いものをたくさん持っているような気がした


