「かわいいですね」

「え!?」


彼はとんでもない事を言ってリビングのソファの前に腰を下ろす


目を丸くしていた私は今朝お弁当を渡したことを思い出し、彼の横に膝と手をついた


「ね、ねえ。そういえばお弁当どうだった?不味くなかった......?」



一瞬返答を詰まらせる様子に、嫌な予感が脳を支配する



........あれ



ダメなやつだ


これは、不味かったのかも.......



そう思ったが



「まだ、食べてません」


決まりが悪そうに、しかしハッキリとした返事が返ってきた



「そ.......そっか......。ごめんね!今朝、急に渡したもんね。そりゃお昼ご飯とか準備してあるよね!」


当然だ


高校生の男の子に見ず知らずの女がお弁当を渡すなんて

常識的に考えてあり得ない



「そうじゃなくて。あの、今からココで食べても良いですか?」


「......い、いいの無理しないで!」


「無理とかじゃなくて、お腹も空いてるし俺が食べたいんです。昼は弁当を食べたくても食べられない理由があって......」


「ほ、ほんとに.......?」




いやいや

ほ、ほんとに?ではないぞ馬鹿女


男子高校生に手作り弁当のことで気を使わせてしまっている


最悪だ



「分かったわ。とりあえず、お弁当出して」


「.......はい」



彼はスポーツバッグから弁当を取り出し、コトリと音を立ててテーブルの上に置く


まだ中身が詰まっている、重みのある音だ


私は一瞬のうちに弁当をひったくると、まるで人質のように自分の胸元に引き寄せた



「おっけ。これは私が明日にでも食べるわ」


「待って!」


男子高校生は予想以上に焦って弁当を取り返しにくる



「いいってば」

「食べます」

「いいの!」

「くださいそれ!」