「こいつ」は言葉通り店の外に出ると、壁にもたれかかっている私に、すぐそこの自動販売機で購入した水を差し出してくれた


「どうぞ、早苗さん」

「......どうも」



酔ってなんかないんだけどね

フリなんだけど



「だいぶ酔ってしまいました?」

「え、ええ」

「そんなに強くはないんですね、お酒。ワインが5杯......いや、普通の女性ならそこそこ酔ってしまう量ですね。すみません、もっと気にかけていればよかった。気持ち悪くないですか?」


この人.......凄い気にかけてくれるじゃん


優しいのかも?



私は「ありがとうございます。大丈夫です」と首を振ると、ぼーっと空を見上げた




「あのー」


「はい?」


「もしかして合コンとか苦手でした?今回1人欠席と聞いてたんですけど、直前になって人数が揃ったと聞いたので、もしかしたら早苗さんが急遽承諾してくれた方のかなと思いまして.......」


「.........」


「あの.......?」



彼には悪いが私はこの状況、よく喋る彼をストレートにめんどくさいなと思ってしまっている



「あぁ.......そうです」


「.......」


「すみません、お酒飲むと眠くなってしまうタイプなんです」



苦し紛れに出た言い訳だったが、彼は私がぼーっとしている理由に納得したように「ああ」と頷いた


「じゃあ、僕の家に寝に来ませんか?」

「へっ?」

「すぐそこなんです。女性が酔ったまま夜道にいるのも危ないですから」

「......」


私は心の中でイヤイヤイヤイヤイヤと首を振った



危ないのはどっちよ!

もっともらしい理由をつけて家に誘うなんて!


だったらあの地獄の空間に戻った方が、女性たちもいるしよっぽど安全よ