「どうかしました?」

彼は微笑んで小さく首をかしげる


「いや......」


私は少しの沈黙の後、ふふ、と笑って首を振り

「そんなことないですよ」

と謙遜した



む......無理!!

この人まじで無理!!


怪しまれないよう笑顔を保つのに必死で、額から首から汗が止まらない


苦手な合コン

早く帰りたいと思いながらも「何コイツ、卒なくやり過ごそ」などと考えていただけなのに


飾らないだ、素直だ、素敵だ


何を分かってそんなことを言われてるんだろうか


温かい褒め言葉ゆえに、よく話もしないうちからポンポンと湧き出るポップコーンの如くそんなことを言われたら逆に不信感が募るわ



コイツの心の内

『女性の本性を見抜き褒めれる俺、好感度高いだろ?』

手に取るようにわかる



まじで嫌!!



「美味しいですよね、このサラダ。何の葉っぱだろうコレ、苦味がいいな」

「ベビーケール......じゃないですかね」

「さすが女の子だから詳しいんですね。加納さん、きっといいお嫁さんになりますよ」

「はは、そうですかね......」



なんで女だから詳しいんだよ......

コイツの思う“いい嫁”って、野菜に詳しい嫁なわけ......?



と、いう様に序盤から苦手意識を持ってしまった彼の言動を気にし始めるとキリがない


しかし心の中で偉そうに毒を吐く私には、それを指摘する勇気も度胸もなく


彼にロックオンされたまま、上っ面の会話をズルズルと続けることとなった