死ぬほどって.....

誰かの命を動かせるようなお弁当は作ってないよ.....


「そんな豪華なものじゃないから。ほんと、ただのお弁当だから期待しないでね」


そういいながら本当は、涙が出るかと思うほど嬉しかった



「いや、もう、朝から無理.....」

「はは.....なにそれ」


作ってよかった

ほとんど弱音を吐かないから、もしかしたら要らぬおせっかいかもしれないと何度か思いとどまったけど


少しでも

力になれたみたいだ



「さ、行っておいで!」


私は扉に鍵を掛け終えた彼の背中を軽くたたいてエールを送る


男子高校生は「はい」と返事をしてほほ笑んでくれた

「行ってきます」


そして歩き出し、途中で振り返る



「帰ったらコレ、おねーさんちに返しに行きます。感想付きで」


「はいはい、待ってるね。気を付けて」



彼の背中が見えなくなるまで見送った後

私は部屋に帰り母の写真に向かって土下座した


「加納早苗、23歳会社員。土曜日の朝から同じアパートの男子高校生と家族ごっこみたいなことをしてしまいました。普段はクールだけどすごい笑顔がかわいいです。めっちゃいい子です。あれ以上キュンとしないようにどうか空から私を見張っていてくださいお母さん」


額を床につけ、空で母はなんと言っているだろうかと想像する


ホステスだった母はきっと「知らないわよ」と他人事のように笑っている気がした