8時30分
「確か彼.....8時起きって言ってたよね」
もう部活に出かけてしまっただろうか
私はドキドキしながら303号室の扉を見上げた
女の子と違って男子は支度が早いからな〜
ちょっと遅くなってしまったな
私はそう思いながら右手に持った小さなバッグに目を落とした
いつもコンビニ弁当じゃ寂しいかもと、ちょっと張り切って部活用のお弁当を作ってみたりなんかしてしまったのだ
「いや、今になってなんか緊張すんな。ウザいかもしれないし」
インターホン押して誰も出て来なければ、それはそれでちょっと命が救われる
勇気が出ずに立ちすくんでいると部屋の扉がガチャリと開いて、中からジャージ姿の男子高校生が出てきた
扉を開ける態勢のまま、彼は人の気配に気が付いて動きを止める
「え.....」
「あ」
しまった!!!
これじゃただの怪しい待ち伏せおばさんだ!!!
彼は予期せぬおばさんの登場に目を大きく見開くと、そのまま無言で固まってしまった
「あ、えっと、おはよう。朝からいきなり来てごめんね。実は早起きしたからお弁当を作ったんだ.....。いつもコンビニって言ってたから、私もそういう時期があったから.....なんか気になって。もしよければ.....」
ぎこちなく言葉を濁してからから遠慮がちに右手を差し出す
受け取ってもらえるだろうか
今になって不安になってきたが、彼はエナメルバッグを肩に担ぐとおそるおそる両手でお弁当を受け取ってくれた
「私も小学生の頃ちょっとだけミニバスやっててね、その頃のこと思いだして、地べたに座ってても食べやすいようなのにしてみたから」
言いながらゆっくり顔を上げると、視線があった途端に彼は手で口元を押さえた
_____えっ
顔、赤くなってる?
あのポーカーフェイス男子高校生の顔が!!
「大丈夫.....?」
おそるおそる尋ねると、彼は顔をそらしてコクコクと頷く
「大丈夫です。いや、無理.....」
「どっちなのよ」
「.....なんか死ぬほど嬉しくて」
それを聞いて私は
目を点にしてしまった