ボロアパートの2階



202号室の俺の家の隣に、2人の親子が引っ越してきた




今まで空いていた201号室に人の気配を感じ、住人が増えたことには気がついていたが

住人の正体を知ったのは、それから一ヶ月後のことだった





「あれ、もしかして202号室の子?はじめまして!」


カンカンカンと錆びた鉄の音を立てて階段を上ってきた制服姿の女の人が、202号室の前にうずくまっていた自分に気がついて声をかける



学校から帰宅したのだろう、彼女はカバンから鍵を取り出しながら自己紹介をした


「私1ヶ月くらい前にここに引っ越してきた加納早苗っていいます。よろしくね」


「......」



返事をしない俺に対し、彼女は不思議そうに首を傾げた



「人見知り......にしてはすごいこっちを見てくるな」



鍵を開ける手を止め、暫く俺を見下ろす




俺は藁にもすがる思いで

たった今会ったばかりの彼女にお願いした





「あのさ......なんか食べるものちょうだい」