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その日の夜



ロッジの前で海を見ながら全員でバーベキューをしていた


近くのスーパーで大量に野菜や肉、シーフードを買ったが、がっつく野郎どもを見るに完食まで時間はそうかからなさそうだ



美味しそうな音を立て焼ける肉の匂いが、まだ何も食べていない空腹に刺さった



焼けた肉をタレにつけていた安井が、自分の存在に気がつく



「あ、火野くんおかえり。早苗さん食べてくれた?」


「うん。食べるって言ってた」


「よかった。みんなすごい勢いで食べてる。火野くんも早く食べないとなくなっちゃうよ」


「ほんとだな」


「じゃ、僕は肉争奪戦に行ってくるから!」


「......ああ」



思いのほか安井がバーベキューを楽しんでいて嬉しい


先ほど早苗に焼けた肉と野菜を届けた時は、「もう全然元気なんだけど、ベッドで食べられるなんて楽だわー。私もバーベキュー行こうと思ってたけど、ま、いいか〜テレビ見れるし」なんて言っていた


自分が想像していたよりも、彼女はインドア派なようだ




......俺もなんか食うか



争奪戦は遠慮だけど適当に、肉でも野菜でも焼けてるっぽいやつがあれば貰おう


そう考えてバーベキューグリルの前まで移動しようとすると、まるで考えを読まれたかのように後ろから声をかけられる



「Uber火野くんおかえり。焼けてる肉あるからあげる」


振り返ると、串刺しの肉をこちらに向けて差し出した仁香が立っていた



「いや、いいっすよそれ自分で食べてください」


「ううんー、火野くんが早苗ちゃんにご飯届けに行ってるとき、1人1本食べたの。君なかなか帰ってこないからさぁ〜?」


「あぁ、すいません......」