彼が部屋に帰るのを見届けた後、私は先ほどまで自分以外の人がいたワンルームをぼうっと眺めた



後になって、名前も詳しいことはなにも知らない男子高校生のことが気になりだす


人生で関わったことのないタイプの人間すぎて、思ったよりも衝撃を受けたし余韻も凄い


本当にこの部屋に十代の男の子がいたなんて


ましてブラジャーを見られただなんてお母さんが知ったら絶句するね



せっかくの金曜日

ビールでも飲もうと思っていたけれど、今日はやめておくことにする


私はソファに座るとケータイを開いて、写真フォルダからとある一枚をタップした



「.....お母さん。お母さんが言ってた通り、人生には色々と予期せぬ事があるものね」


写真に写っているのは、レストランにて笑顔を見せる女性



事実は小説より奇なり


今はもうこの世にはいない母が、そう言っていた


母の人生が波乱万丈なだけであって、自分には当てはまらないと思っていたけど

もしかするとそうでもないのかもしれない



「事実は小説より奇なり.....。いつ、なんでお母さんは私にそう言ったんだっけ?」



うーん?


「いたっ.....」

考えていると、背中の古傷がズキリと痛んだ


一週間乗り切って疲れた身体は正直なのかも



仕事の疲れを癒すため、その日私は早めに眠りについた