親御さんにも申し訳ない

変な噂が立ってあなたが有る事無い事言われるのはもっと嫌


そう言いたかった


けれど

彼の気持ちよりももっと別のことを優先したこの類の説教は、受け取り方によっては突き放すように聞こえなくも無いと思いとどまる



彼の手がそっと私の二の腕に伸びた


その瞬間私はハッとしてドキリと胸を鳴らす

彼の大きくて細い手がわずかに震えていた


「なんで大人みたいなこと言うんですか」

声が苦しそうで心がずきりと痛む



____大人だもの


そう返事をできずにいる私の二の腕をより一層強く掴んだ彼は、薄い笑い声を漏らした


「細い」

「.....」

「全部俺のために言ってるってわかってます。ただ悔しいだけです」


この時私には、彼がどんな気持ちなのか

全く想像もつかなかった



そこで簡単なアイデアを思いつく


「あ!じゃあ、夕飯の時間になったらタッパー持っておいで。おかずとか色々詰めてあげるから」

「.....は」

「お米なら炊けるでしょ?タッパーでおかず持ってってお部屋で食べなよ」


彼は心底「まじかよ」とでも言いたげに額に手を当てる

しばらく動かなかった彼は、それから何かを観念したかのように2、3度軽く頷いた


「分かりました」


二の腕から手が離れる



掴まれていた場所が、熱くジンジンした