その時

五月の右手がそっと上がり


指先がお腹___というよりはTシャツにそっと触れた




_______え



「大丈夫ですか、ここ。肘ぶつけられた?」


「う、うん!そう......あの時めっちゃ痛くて。めっちゃ痛くてさ......」



見てたんだ


私が溺れた理由、分かってて......




誰も見てないと思ってた


五月くんだけが、何が起こったのかしっかり見ていてくれた




次の瞬間


予期せず目尻がじわっと涙でにじむ



うっっっそでしょーー自分



「はは......やばい。23なのに高校生の前で泣くとか無いよね」


「いやムリしすぎです」



五月は呆れたようにボヤきつつも、優しい表情で首を振る


そしてすっくと立ち上がり、私を見下ろした




「風呂上がり、かわいいですね......泣き顔も。シャワー浴びた後、一回抱きしめさせてください」





脱衣所へ向かう背中を見送りながら



私の心臓は音を立てずに爆発したのであった