この迷惑極まりない太陽を崇拝する人間の頭が理解できない。


無駄に眩しくて、無駄に光り輝いて、これがなければ人間は生きていけないというが、その前に人間なんて全て死んでしまえば良いと、僕は常々思っていた。


動植物もいっそ枯れ果てて、何の生き物も居ない、恐ろしい闇だけが広がる暗鬱の世界に成り下がればいい。



「まぁ、シーファったらだらしない。吸血鬼じゃあるまいし…太陽を毛嫌いしてるからそうなるのよ」



五歳に嗜まれ、僕は言い返したい言葉を飲み込んで、続ける。



「僕は八方美人な女は好きじゃないんだよ」



「月は、一途だものね」



太陽の光だけを自分の糧に、生きる月。


太陽が地球へと愛を撒き散らし、月に与える愛が徐々に減り、その身体が影って、欠けて、削り落ちても月は太陽だけを見ている。


僕は月が好きだ。


一番ではないけれど、トップスリーには入る。


そもそも僕には好きなものが片手で数えるくらいしかないので月も張り合いがないだろう。



「いいわ、あの森で休憩しましょう」



指差したソウェルの促す先には自殺者を思いとどまらせようと立てられた無意味な看板が入り口にある森だった。



「…居心地が良さそうだね」