「轢死はダメね」



「バラバラになるしね」



「やっぱり銃殺か、刺殺か。苦しまないなら毒殺か、それとも練炭で一酸化炭素中毒死か……」



「死ぬって大変だね」



ソウェルは小さく溜息をついて僕の言葉に同意を返した。


少し歩いて漸く辿り着いた我が家。


僕たちは黒を貴重としたその部屋に入ると、一気に肩の力が抜けて、どこへ行くよりもまず先に、書斎へと向かうと二人して絨毯の上に寝転がった。



「此処が一番落ち着くね」



「えぇ、疲れたわ。結局決まらなかったし…」



ごめんなさい、とソウェルは小さく呟いた。


僕はソウェルの隣へ移動するとその柔らかい金糸のような髪の毛を指先で撫でてやった。



「ねぇ、どうして死にたいと思ったんだい?」



ソウェルは髪を撫でる僕の手に指を絡めて、ギュッと握り締める。



「だって、幸せなんだもの」



僕の指先に頬を寄せながら、ソウェルは続ける。



「…私が恐れているのは、日々ある不幸じゃないわ。いつもある日常の幸せが崩れることが怖いの」



「不安にさせてしまってる…?」



空いているほうの手で頬を撫でると、冷たい滴が指先に触れた。