女は三つに分かれていた。



先ずは線路から抜けなかった脚。


そして脚から臍辺りまで。


そして臍の上から頭。


女の顔は恐怖に歪み、恐ろしいほどに引きつり、スプラッター映画で幽霊に怯えた主人公が叫び声を上げているシーンを一時停止したような、そんな表情だった。



「だんだんと、自分の死が目に見えてわかると、本当はこんなに怖いものなのね」



ソウェルは女の顔を眺めながら呟いた。



「彼女はまだ自分が死ぬとは思っていなかったからじゃない?」



「やりたいことがあったのかしら」



首を傾げるソウェルに「そうかもね」と僕は曖昧に返した。



「ところでこの顔、少し見たことがあると思わない?」



「そう?…作家ではないと思うけど」



作家以外に興味のないソウェルはまじまじと女の顔を眺めたけど、答えは出なかったようで首を傾いで見せた。


僕は暫く彼女のおぞましい表情を眺めていた。



「……あ、ジュリエッタ…?」



メルヴィー街で行われたミス・メルヴィーコンテストで優勝をした、ジュリエッタ=アルヴィナ。


口に出して言って、この女が轢き殺される前の、その顔を思い出す。


やはりそうだ。


僕の声が聞こえたのか、惨劇の一部始終を見ていた男が小さくポツリと漏らした。



「バチが当たったんだ、金で何でも出来ると思って……死んで当然だ、こんなヤツ」



「何かあったのかい?」



僕の問いに、男は吐き捨てるように語りだした。