触れていることで漸くちゃんと居ることを確認した僕は一つ、安堵の息を漏らして、呟いた。
「消えないで…」
「…消えないわよ」
ソウェルは笑っていったけど、それは嘘だと思った。
彼女はいつか、どこか遠い場所へと僕をおいて行ってしまうのだと、気付いていた。
彼女の見ている世界は僕の見ている世界ではなく、彼女の行きたい世界は僕と居るこの世界ではないのだ。
問い詰めてもきっと、彼女ははぐらかす。
いや、彼女は無意識に違う世界を望んでいるのだ。
僕の手を握り締めたソウェルは僕の手を引いてゆっくりと波打ち際を歩き出した。
海は漸く夕日を全て飲み込んで、段々と空は薄暗く重たい、暗い闇の色に変わりつつあった。
僕はそんな空を見上げながら、自分がどうして太陽が嫌いなのかがわかったような気がした。
「ソウェル、僕はやっぱりあの太陽が嫌いだ」
「知ってる。八方美人だものね」
「それもあるけどね、あの太陽は偽物なのに、まるで自分が一番だと言いたげに姿を見せるだろう?」
「偽物?」
ソウェルは首を傾げて問うた。