先を行くと、一つの席に沢山の観衆が周りを取り囲んでいた。


銃声が鳴るたびに、どよめく歓声。


僕は少し遠くからその席を眺める事にした。


そこには一人の老人がなにやらぶつぶつと呟きながら拳銃を構えている。


その先には若い女が怯えた表情で許しを乞い、助けを求めるように泣き叫んでいた。


だがしかし、先ほど撃たれていた男たち同様に、彼らはこの国の言葉ではない別の国の言葉を話していた。


趣味で語学を勉強していた僕には伝わるが、ここに居るほかの人間にその言葉は通じないし、通じたとしても、誰も助けの手など、さし伸ばさないだろう。



此処は、射的場。


拳銃を撃って当たり前の場所であり、その的が人間であるのが当たり前の場所なのだ。



「畜生、俺をコケにしやがって…!」



老人はそう忌々しく呟くと、その女の額のど真ん中を一発で仕留めた。


どよめく歓声。


ビシャ、と脳があたりに撒き散らされて、女は力なくダランと顔を俯かせたまま動かない。



「畜生!畜生!畜生!」



老人は誰かに対しての怒りを、女の頭に向かって何度も何度も弾丸へと形を変えてぶちまけた。


女の頭が潰れるまで、何度も何度も。


女の頭が潰れても、何度も何度も。



「どんどん惨めになっているのに、気付いてる?」



透き通った声が、ぴたりと銃声を止めた。


女はもう既に動かない。