「シーファ、シーファ起きて。もうお昼よ」



目を覚ますと、既に支度を終えたソウェルが僕のベット、もとい、僕の上に乗って揺さぶってきた。



「……天気は?」



「晴れよ」



ガバッと布団を頭まで被って、僕は暗闇を作った。


あぁ、もうこの中で一生過ごしていたい。太陽の下になんて出たくない。太陽なんて嫌いだ。


しかしソウェルはその布団を引き剥がそうとぐいぐいと引っ張った。


五歳児の力なんて高が知れているが、低血圧な僕はその力にも負けそうなほど疲弊していた。



「シーファ!約束したでしょ!」



ソウェルは頬を膨らませて布団を引っ張る。



「したけどもう少しだけ眠らせてよ、昨日遅くまで本を読んでた所為で眠たいんだ」



「Menteur!」



ウソツキ。


ソウェルはフランス語でそういうと、布団を引っ張っていた手を離してバタバタと走って部屋を出て行った。



あぁ、やってしまった。



僕は布団を被りながらソウェルを追わなければと、起き上がったが、低血圧が災いして目の前がチカチカする。目が廻る。頭が痛い。


その間にも小さな足音はどこかへ行ってしまった。


街へと出たら、きっと彼女は帰ってこれなくなるだろう。


僕はシルクハットを被り、外套(マント)を羽織ると彼女が忘れていった日傘と、自分の日傘を持って部屋を出た。