お互いに妥協をして、僕らは頷きあった。


明日も太陽の下を歩く羽目になるのか。


それを思うと僕は溜息が出そうになり、咄嗟に飲み込んで、一日の疲れを癒すべく鞄の中に入れていた蔵書の一つのページを開いた。



「シーファは本が好きね」



「落ち着くからね」



「早く寝てね?」



「うん、ソウェルはもうお休み」



「おやすみなさい」



時刻は午後十時をとうに過ぎていて、ソウェルはそういうや否や、次の瞬間には深い深い寝息を付いていた。


まさか泊り込みで出かける事になるとは思っていなかった僕は、この散歩がどれほど長く続くのか考えあぐねていた。


全てはソウェルの気まぐれ。


だから帰ることさえ気まぐれなのだ。


太陽の光が一遍も注さない、分厚く黒いカーテンに覆われた部屋が懐かしい。


僕はホームシックになりながらこの寂しさを埋めるべく、読みすぎて所々色あせてカバーの破れてしまった本の文字を追った。