ベンチに人影がいた。 そっとベンチの前に行くと、鞄がおいてある。しかも、学生鞄。そこには似合わずなぜかハートのチャームがぶらさがっている。 男子学生だった。しかも、私の高校の近くにある高校。茶色い前髪が閉じた目の上をやさしく揺らしている。 ……寝てる。 寝ているなら、いいや。私の邪魔はされないし。 私は小さく息をつくと、彼の隣のベンチにそっと腰掛ける。 いつのまにか、電車は行ってしまっていた。