「すずねちゃん、僕の願いは…あいつを殺…」
そこまで言った長野先生は急に動きを止めた。

「長野先生?」
「あ、あああ」
長野先生は車のハンドルを握ったまま頭を前後に大きく振り始めた。
「先生??長野先生!」
私が叫んでも長野先生は頭を振り続ける。

「うあぁぁぁぁぁ」
奇声を発しながら頭を振って、私が叫んでも聞こえない。
長野先生は車のハンドルを左右に動かした。
私たちが乗っている車が右に、左にと大きく揺れる。

「いや、先生!やめて、やめてぇ!」
私は必死に何度も呼びかけるが長野先生が元に戻ることはない。
長野先生がアクセルを強く踏む。
速度メーターの針ががみるみる左に傾いていく。
「先生!速度落としてよ!じゃないと…」
前方から別の車が走ってくる。
この車は知らないうちに反対側の車線へと入り込んでいた。
「いや!」
私は目をつぶりその場に丸まった。
車が急ブレーキをかけた時の衝撃が私の体を襲う。
体が前にナ投げ出される感覚があった。
急ブレーキでタイヤが刷れる音が聞こえる。
あ、もう…助かんな……。