結局式の内容は頭に入ってこなかった。
あのこまりの笑みの意味を考えていたらとても校長先生の話など聞けなかった。
私はそのあとの担任の先生の話も聞き逃した。
聞き取れたのは担任の名前は長野と書いてちょうのと読むということだけだった。

入学式中の嫌な予感は当たっていた。
こまりは下校中もあの男子に声をかけていた。
名前は何て言うの?とか、私は中田こまりよ!とか。
私の胸にまた、嫌な予感がよぎる。
もしかしたら『あの約束』は守られないかもしれない。

結局、式のあとはこまりと話さなかった。
こまりはあの男子に夢中だった。
私のことは気にさえもしなかった。