「すずねちゃん、よければだけど、ないとくんのことを守ってやってはくれないか?」
「え?」
間抜けな声が私の口からこぼれた。
守ってと言われても一体誰から守ればいい。どう守ればいい。
「ないとくんが自殺したがっている理由は学校でのいじめだと聞いた。そして、化け物だから死ぬことが出来ないと知って追い詰められているとか。僕も自分のクラスで怒っているいじめなのに気づいてあげられなかったこと、とても申し訳なく思っている。だから、今度からはしっかりいじめに目を光らせておこうと思ってるんだ。」

長野先生はただポツリとこう呟いた。

「でも、化け物である彼の、化け物だと知ってしまった彼の心を癒せるのはきっと君しかいない。」
「どういうとこですか?」
長野先生の気持ちは私には分からない。
ただ、彼が感じた心の痛みは手に取るように感じた気がした。

「化け物をこの世から消してくれないか?もう二度とこの世に生まれぬよう」

長野先生は迷いのない声でこう言った。
私にはこの言葉が自分を消してくれという言葉に感じられた。
化け物の存在を否定すること。
それは長野先生にとって自分の存在を、生を否定すること。
そしてそれは、私にとっても同じ。