家には長野先生が車で送ってくれた。

辺りは既に日が沈み、暗闇に包まれていた。
お母さんにはすぐに帰ると伝えていたのに、想像以上に遅くなり、日没までには帰るつもりが夜の八時になってしまった。これは夜ご飯があるかどうか怪しい。お母さんが鬼の形相で私を待っている姿が簡単に想像でき、私は長野先生に分からないように軽く身震いをした。

「ないと、寝てるかい?」
長野先生が小声で私に問いかけた。
「はい、寝ていると思います」
私は長野先生に習って小声で返した。
なぜ小声なのかは分からない。
「すずねちゃんにお願いがあるんだ」
長野先生は車の前にあるミラーで私の顔を見る。
私はそのミラーに写る長野先生の瞳を見つめ返した。
真剣な眼差しが私に突き刺さる。


「大きな声は出さないでね。ないとが起きるといけないから」
長野先生がそう言って初めて小声で話しかけてきた理由が分かった。
そして、この後の会話が明るくないということも。