「もしもし」
私は受話器を片手に電話が乗ってる台に頬杖を付いた。

「もしもし、すずねちゃん?突然ごめんね」
電話越しの時彦は小さくゆっくりとした声で私に謝罪した。

「別にいいですよ。全然大丈夫です」
私はいつもより高くか細い声で話す。
緊張している事が自分でもはっきり分かった。

「あ、でね、すずねちゃん。実は頼みたい事があるんだ」
時彦はいつも通りの明るい声で何事もなかったかのように話し出す。
どうやらさっきの小さい声は申し訳なさの現れだったようだ。
そう思うと心の重りがスッと取れた。
それと同時に心に安心感が溢れる。
今、ないとの事を言われたらきっと私は正気ではいられなかっただろう。

「はい、大丈夫です。何でもどうぞ!」
私の声も自然と明るくなっていることに気づく。
安心しているからこそ出せた声だ。

「今から私の家に来てくれないか?大事な話があるんだ」
時彦の声は先程のように明るい。
でも電話越しの時彦の顔は私には見えない。
安心と不安が心に半分ずつ宿った。