目の前の公園を見つめる。
小さい頃、こまりと遊んだ思い出を。
ここで待っていれば、こまりが手を振って駆け寄って来るような気がして…。


「すずねちゃーん!おはよー!」
私は私を呼ぶ声で意識が現実に引き戻される。

公園の前の住宅街からお団子頭の小柄な女の子が手を振って駆け寄って来る。

その仕草に懐かしさを覚える。
そして、お団子頭の女の子に彼女の姿が重なった。
いや、違う。重ねたんだ。
目の前の女の子が、こまりだったら…。

未練がましい自分が嫌になる。

女の子は、ピンクの袋を大切そうに抱き抱えている。
「すずねちゃん、今日がついに来ちゃったよ…。」
女の子は興奮気味な声をしている。
言葉は嫌そうにしているが実はずっと楽しみに待っていたのだろう。


この女の子は十二月にないとの好物を聞いてきたないと好きの女の子だ。
名前は笹島ももか。
あの日から頻繁に顔を合わすようになり、家も近いということで一緒に通学するようになった。
クラスは違うのだか休み時間は度々会いに来てくれる。
私の新しい友達だ。

「バレンタインデー、だもんね」
敢えてニヤニヤとした顔で接する。
私の表情を見た彼女は更に興奮したようだ。

「そうだよ、バレンタインデーだよ」
そう言って笑う彼女の顔はひきつっていた。
緊張で胸が張り裂けそうと言わんばかりだ。