入学式まで時間がある。目的は果たせそうだ。

私は家族に大きな声で行ってきますと言うと駆け足で今年度入学する中学校に向かった。
私の入学する中学校、『広浜中学校』は正門の前の桜並木が有名だった。
有名と言ってもここ『広浜町』にすむ人くらいしか知らないけど。



「うわ」 思わず声が漏れた。
正門前の桜並木は私の想像以上に綺麗だった。
私の目的はこの桜並木を見ることだった。
早く家を出た甲斐があった。
桜並木の向こう側には校舎が見える。
小学校よりかなり大きく、私はその校舎にも驚きを隠せなかった。


あまりの美しさに見とれていると、私と同じ今年度入学する一年生たちが集まってきた。その中にはやっぱり…


「おーい！」制服を着た女の子が手を振りながら走って近寄ってくる。
「こまり！」私は彼女の名を呼んだ。彼女は私に抱き、私の目を見つめた。
「入学おめでとー！」
こまりは大輪の笑顔で私を祝福した。
「あんたこそおめでとうこまり！」
私も負けずと笑顔で返す。
何てことない会話だった。
こまりと話しているとあっという間に教室に着いた。