もうダメだ。
私はベッドに倒れるように横たわった。
もう何もしたくない。
学校にも行きたくない。学校なんて大嫌いだ。
元はと言えば学校のせいだ。
学校が成績なんてつけるからだ。
テストなんてやるからだ。
テストのせいで私は母に怒られた。
すべてはテストのせいだ。
そう!私は悪くない!
…通知表見たくないわ。母の顔も見たくないわ。



突然体に鋭い痛みが走った。
痛みのあまり目が覚める。
強力な電気が走ったようだった。
たまらず立ち上がる。
何かの病気かも知れないと言う思いが頭を過る。
私は母に相談しようと思ったが例の件で今は顔も見たくない。
仕方ない、あんま話さない父にでも相談しよう。


一階に降りるといつも通り父がリビングで寝ていた。
夜のリビングは父の寝室なのだ。
父を起こそうとしたその時、リビングの窓が僅かに開いている事に気づいた。
そこに人が目に写った。
その人物は私が良く知っている人物だった。
「大川ないと?」
彼は懐中電灯を片手に体を曲げて空いた片手で自分の体を押さえていた。
もしかしたら彼も同じ病気なのかも知れない。
気づけば私は家の外に出て、彼を追っていた。


「あの、大川ないとくん!」
私は声を振り絞り彼の名を呼ぶ。
静かな夜の住宅街に私の声が響いた。
彼は痛みに歪めた顔でこちらを向いた。
その顔もやはり美しい。なんなんだこいつ。
「青木すずね、どうした。」
彼は話すのもやっとという感じだった。
私はなるべく伝わりやすいように話す。
「体が痛くて寝れないの。何か電気が走っているみたい。困ったなって思っていたらあなたを見つけたの。」
私はなんとか伝えると彼の顔を見る。
くしゃくしゃになってもなお美しいその顔の口が動いた。
「この痛みはこの近く何か良くないものがいるということだ。」
彼は息をするのも辛そうだった。
でも私は彼の言うことを頭の中で処理出来なかった。
「は?どういうこと?」
意味が分からなかった。
何か良くないものって…これは病気なんじゃないのか?
「俺たちは人間じゃないから同じ化け物の気を感じることが出来る。この痛みはそのためだ。」
ないとはやっとのことで言い終えた。
でも私は信じれなかった。
「…あんた、バカなの?」
私の反応はこれだった。
私達が化け物?この痛みは化け物の気?ふざけんな。
「化け物とかこの世にいるわけないでしょ?」
私はこう冷たく言い放ち嘲笑した。
しかし、彼はそんな私にため息をついた。
その態度がとんでもなく頭にきた。
「バカなこと言ってんのあんたでしょうが!」
私は怒りを露にして言った。
彼はそんな私を無視して、歩いていった。
もういい、やはり父に助けを求めよう。
家に引き換えそうとしたが、私の足は数歩進んだだけで止まってしまった。
信じているわけじゃない。ただ彼のことが心配なだけ。
私は彼を再び追いかけた。