私は覗きこんだことを後悔した。
「どうしたの?お母さん。どうしたの!」
母は大粒の涙を流しながら泣いていた。
思わず母を抱き締める。
私の顔はちょうど母の耳の辺りにあった。

「ねぇ、お母さんお願い。私きっと受け止める。受け止めて見せる。どんなことでもいいの。私は負けない。だから…教えて。」
私の決意は固かった。受け止める自信があった。
私は母の目をじっと見つめる。
反らすものか。絶対に。

数分の沈黙の後先に口を開いたのは母だった。
「どうして…。」
母の声はまだ震えていた。
「お母さん、遠慮しないで。」
私はそんな母を落ち着かせようとする。
「どうしてこうなるのよ!」
母は叫んだ。
いつも大人しい母のこんな声は聞いたことがなかった。
「何で出会っちゃうのよ、あいつに!!」
母はより強く叫んだ。
突然のことに体は震える。
心臓がバクバクと悲鳴を上げた。
ほんの30分くらいの会話だったはずなのに永遠のように感じた。