西の空に太陽が沈んでいく。
私はうつ向いていたから、ほとんど見ていなかったけれど。


家に着き玄関のドアを開ける。
心なしかいつもよりドアが重い気がした。


「ただいま」
母がキッチンからこちらへ向かってきた。
「お帰り、どうしたの?元気ないわね。」
母は心配そうな顔で私の顔を覗きこむ。

私は、ほとんど何も考えずに聞いていた。
「ねぇ、お母さん…。大川ないとって何者なの?」
母の顔から私を心配する表情は消えた。
そこには人間の顔があるだけだった。

やがて母の肩がカタカタと震え出す。
今度は私が顔を覗きこむ番だ。