正直…何がおきているのか分からなかった。 やっと理解出来た時には…優しく触れ合っていた互いの唇がそっと離れた頃…… 「…莉愛」 初めて呼ばれた名前 嬉しさと幸せ感と温かさが私を包み込んで、涙が溢れ出しそうになった。 「あなたが好き」と、思わずそう言いそうになって… だけれど、直ぐに私の口は開くのを止めた…… 目の前の梓が、私の想像とは違う表情をしていたから。 片眉を垂れ下げ、どこか悲し気に…儚げに… 私を見下ろしていたから。 私はその言葉を言うこともなく、ただそんな彼を見上げた。