運転席にはいつも通り伊吹さんが乗っている。




「莉愛さんのご自宅でよろしいですか?」




バックミラー越しに伊吹さんが梓を見ているのが分かる。



座席へと深く座り直した梓は、スッと前を向き口を開くと




「いや、俺の家に頼む」




………………ん?

梓の家…………?




それってどういう事?私も一緒に行くって事?
いや、そんなわけないよね…


きっと梓を送った後に、私の家に行くって事なのかもしれない。



うん、きっとそう。




チラッと梓を横目で見るけれど、腕を組みその顔は先程同様前を向いたまま、何を考えてるのか分からない。




こっそりと見ていたつもりなのに…




「何だ」




どうやら梓は気がついていたらしく…

目線だけを私へと向けてくる。