光希が心の中でそんな浅ましい事を考えてるなんて、清花はちっとも気付いていない。
少し考えてから、訥々と語り出した。

「子供の時にお会いした時は、単純に格好いいと思ってたんです。でもこの間お会いして、二人っきりでゆっくりお話しして。『この人を幸せにしたいな』って。随分年上の方に、まだ学生の私がおこがましいんですけど。とにかく、なんだかそう思ったんです」

ゆっくりと確認するように紡がれる言葉は自分じゃなく相手の幸福を願う言葉で、光希は自分が恥ずかしくなった。

「ーーーそんなに想われて、婚約者さんも幸せだね」

そう返すのが精一杯で。

自身の心の醜悪さに泣きたくなりながら、涙を零さないように前を睨むように歩いた。