「でもあのランクの美人でしかもお嬢様なら、流石の麻里子も勝てないんじゃない?岡澤主任も満更でもないって感じだし」

「あーあ。やっぱり御曹司さまには政略結婚のお相手がいるのね。バカらし」

「じゃあさ、気分転換に飲みに行こうよ。麻里子が誘ったらこないだの合コンの銀行マンとかすぐだって」

仲良さげに会社を出て行く岡澤達を見送りながら、好き勝手言う藤末達も出口へ進んで行く。

「政略結婚……縁談…………お見合い?」

虚ろに呟く光希の耳にはもう何の音も入ってこない。ガラス越しにタクシーに乗り込む岡澤達が眼に映るだけだ。

背中に手を添えて優しくエスコートする岡澤と、それをはにかんだ笑顔で見つめる清花だけだ。