「岡澤主任の事はまぁ、理解出来なくもないんだけどさ。恋人がいることだけでも公表しないの?」

「自分から宣言するのも変ですからね。誰かに聞かれる事もないですし」

「それは分かるけど。でもさ、恋人いるって言ってもらった方が岡澤さんは嬉しいんじゃない?心配しなくて済むし」

「ーーー心配、ですか?」

「そりゃ心配だよ!売約済みって公表しとかなきゃ、可愛い彼女が他の男がぐいぐい迫られるかもしれないって。しかも自分は仕事で、しょっちゅう海外行っちゃうし」

「私がモテるなんて確率、低すぎてありえませんよ」

静香さんの心配は有り難いけれど、これまでの人生を振り返っても、そんな事は万に一つもないだろう。岡澤だってそんな可能性、考えた事もないはずだ。

「これ、確率じゃなくて可能性の話ね。大体、男なんてみんなヤキモチ焼きなんだから、安心させてあげた方がいいと思うよ?」

「もしかして、静香さんの経験談ですか?」

「当たり前じゃない。これでも既婚者ですから」