食事を終えて、お風呂も入って。まったりとした時間に心も身体も解き放って幸せに浸っていた時、思い出したように岡澤が話題を振り返してきた。
いや、アラサーになっても「可愛い」と評される外見に似合わずキレる営業マンな岡澤の事だ、このタイミングを狙って待っていたのだろう。光希が最も警戒を解く、このタイミングを。

「ーーーそれは、前にも言ったじゃない。プライベートで名前で呼んでて、間違って会社でも呼んじゃったら大変だからって」

「まだ間違える?だって光希、もう社会人五年目だよ。大丈夫だって」

「ダメだって、ダメダメ。もし間違えて呼んじゃったら、翌日から私、会社で生きていけないもん」

「まーた、そうやって大袈裟なんだから」

「いやいや、先輩こそいい加減自分がどれだけモテてるか自覚して下さいよ」

「んー、でもそれとこれは別問題だと思うんだけどなぁ……」

ブツブツと言い募ってはいるが、今日は本気で説得する気はないらしい。右横に座る光希の頭を強引に肩にもたらさせ「惚れた弱みだなー…」とか呟いて髪を撫でてくれる。