「恥ずかしかったって……それだけ?」

たったそれだけの理由だったのかと力が抜ける。

「好きな彼女にマザコン疑われたくなかったんだよ」

ちょっとキレ気味に言い切った後、岡澤は強引に光希をその腕に閉じ込めた。

「それで?もう聞かなきゃいけない事は終了?」

「ーーーん、終了」

確かに光希が岡澤を好きな気持ちに家庭環境や親の職業は関係ない。ほうっと息を吐こうとして、気がかりを思い出した。

「あ、やっぱりもう一個!先輩のご両親は私の事、認めてくれますか?」

清花との縁談を勧めていたのだ、反対される事もありえる。

腕の中、不安げに見上げる光希の顔は岡澤が好きだと言っているも同然で。岡澤は幸せだと微笑んでその額に軽くキスを落とす。