「光希、ありがとう」

その時、よく響く声が周囲を制した。

光希を含む、その場にいた全員が声の方へと顔を向ける。

視線の先には嬉しい気持ちを満面の笑みに変えた岡澤が立っていた。

「勝手なことばっかり言われて腹立ってたけど、そのおかげで光希の告白聞けたんだから感謝だな」

「先輩……」

呆然とする藤末達を通り過ぎた岡澤は、ゆっくりと光希の前で止まるといつもの仕草で優しく頭を撫でた。

「俺の為に怒ってくれてありがとう」

「だって!だって先輩はいつも頑張ってたのに、御曹司だってわかったらその努力さえもなかった事にされて。それが悔しくて」

頭を撫でる手の温かさと、話す事でぶり返した悔しさに涙腺が決壊した光希を、岡澤は嬉しそうに見つめ続ける。