うとうとするたび、姉貴の死に顔が脳裏に浮かんでくる。


おれと同じ朱《あか》みの強い色の両眼は見開かれて、どこでもない場所を映していた。


抱きしめた体は、あんなに柔らかかったのに、どんどん硬くなっていった。



勝手に脳内リフレインするのは、死んだ場面ばっかりだ。


姉貴の笑顔は、一生懸命に努力してようやく思い出せる。


「あんたの隣ならヒールも遠慮なく履けるわ」って、いつの間にか身長が百八十センチ超えてたおれを見上げて、笑ってて。


襟ぐりから胸の谷間が見えてて。



ずっと、おれの隣、座ってるはずだったのにな。


今、何でおれひとりだけここにいるんだろうね。



愛する人を守るために男は戦うとか、そんなの、ただのおとぎ話だ。