古い樹のような、土くれのような、錆《さ》びた金属のような、何だかよくわかんない物質が、やせこけた男をとらえて呑み込もうとしている。


いや、逆だ。


男を中心に物質が生まれ出ている。


男を中心に、この空間の地面も天井も壁も形作られている。



吹っ飛んでた意識が戻ってきたとき、おれはここにいた。


目を見開いたまま土気色になってピクリとも動かないその男のそばに、一人きりで転がっていた。



おれは男を見上げた。



「総統って呼ばれてたよね? あんた、偉い人なんだ? そりゃそっか。あんだけ胞珠いっぱい持ってたら、チカラのほうもすごいっしょ」



キラキラまぶしかった胞珠は全部、沈み切った色に変わっている。


粒の粗い砂みたいに、ざらざらだ。


もともとなかった右腕は、相変わらず空っぽだった。