そいつがこっちを向いた。
両眼も漏れなく胞珠で、ダイヤモンドみたいな色だ。
右腕がない。
【壊していいのかい?】
ひどく無邪気に、そいつはおれに訊いた。
その声は、おれが使う思念の声によく似ていた。
でも、圧倒的な大声だった。
ぶん殴られた脳ミソがぺしゃんこになったみたいで、おれは気持ち悪くて吐いた。
胃液が喉を焼いた。
海牙が三日月刀《シミター》を支えにして立った。
「総統、待って……落ち着いてください! 気を確かに持ってください!」
そいつは海牙を見て、首をかしげて、一本きりの腕を伸ばして、三日月刀《シミター》を指差した。
【それは、斬るためのものだ。こんなふうに】
三日月刀《シミター》が浮き上がって、ひるがえった。
旋回する。
煥の首が、冗談みたいにポーンと高く飛んだ。
噴水みたいな鮮血。体が崩れ落ちるのと、首が転がるのと、ほぼ同時。
海牙が口を押さえてよろめいた。
鈴蘭が悲鳴を上げて煥の首に駆け寄った。



