額の胞珠が痛い。
混乱している。
世界のすべてだった姉貴が死んで、おれは空っぽになったはずなのに、戻らない記憶が荒れ狂う砂嵐になって胞珠の内側を汚していく。
痛い。
姉貴が世界のすべて、って。それも胞珠が増幅した思念?
あまりにも魅力に満ちた刺激的な禁忌だったから、おれと姉貴にはちょうどよかったのかもしれなくて。
何かたくさんのモノを捨てて忘れて、おれの中が空洞だ。
痛い。わからない。
知るべきだ。知りたくない。
混乱して、いら立つ。
ズキズキ痛む胞珠が、いら立ちをたやすく増幅して、おれの声に憎しみのチカラが満ちる。
【教えろよ】
直撃する雷鳴のように地響きを伴って、おれの声が思念の大轟音となる。
【何でこんなことになってんだよ? この世界、どうなってんだよ? おれはどうすりゃいいんだよ?】
チカラが暴走する。
号令《コマンド》ではない。
おれの声を聞いたら、誰もが平伏すだろう。
【なあ、教えろよ! おれはどうすりゃいいんだよッ!】
絶対王者の怒号だ。



