文徳はおれの隣にしゃがみ込んで犬を見ながら、ふっと脱力するように笑った。
「飼い犬だったんだな。こいつみたいに、人に飼われた経験がある動物だったら、号令《コマンド》をある程度、理解するのか?」
「そだね。あと、人間社会のすぐそばで縄張り張ってる野良猫とかカラスとか、意外といける。
純粋な野良の場合は、犬のほうが言葉が通じねーことが多いかな。昔、山ん中の別荘で野生の鹿や猪や雉や蛇に遭遇したときも、やっぱ通じなかった」
ちょっと離れたところに立って、冷たいカフェオレを飲み干した煥が、ふてくされたようにボソッと言った。
「何で理仁は動物に怖がられねぇんだ?」
「そりゃー、おれは動物全般が好きだし。あっきーは、動物がちょっと怖いでしょ?」
「別に。慣れてないだけで」
「そのビクビクした感じをさ、胞珠が増幅しちゃうんじゃないの? だから、動物のほうもビビって近寄ってこない」
煥はムッとした顔でホットドッグをかじった。



