煥が半歩、前に出る。


いつでも飛び出せるように身構えている。



襲撃者の視線が煥をまっすぐとらえる。


機械的な口調がまた、言う。



「邪魔ですよ。あなたには用がない。どいてください」


「じゃあ、誰に用がある?」


「さよ子さんと、長江理仁《りひと》」



背筋がゾワッとした。


やっぱりこいつ、おれのこと知ってやがる。



おれは立ち上がって埃を払った。


口を開くより先に、顔がニヤリと仮面みたいに笑う。


癖になった笑顔が、こんなときでも剥がれない。



「話があるって言う割に、いきなり殴り掛かってくるのはおかしいんじゃないの?」