一ヶ月ぶりくらいに爆睡していた入試翌日の昼下がり、一本の電話で起こされた。
電話してきた相手が相手だったんで、起きざるを得なかったというか。
スマホのディスプレイに「総統」とか表示されたらビビるでしょ?
何事かと思ったら、ごくごくフツーの弱ったパパのいじけた愚痴だった。
「この一週間ほど、さよ子が部屋から出てきてくれない。話し掛けても、返事をしてくれない」
だからどうにかしてくれ、と。
おれの入試が終わるまで、電話するのを待ってたらしい。
何でおれにお鉢が回ってきたかというと、簡単に言えば消去法の結果だ。
さよ子が引きこもった原因である煥《あきら》と鈴蘭には、当然ながら相談できない。
姉貴がチャレンジしたけど、あえなく失敗した。
文徳と海牙は入試で忙しかった上に、さよ子の相談役としてはちょっと違うよなって感じだし。



