「理仁先輩、もうやめて。先輩のパパのこと、許してあげてください」


「やだよ。憎いんだよ。殺してやりたい」


「嘘。そんなの嘘です」


「本当だって」


「少しの本当が含まれてるとしても、殺したいなんて言っちゃダメ。やめてください。言葉にしたら、それはチカラを持って、先輩自身を傷付けて苦しめるんです。

だから、もう何も言わないで。罪とか罰とか呪いとか、先輩はもうあれこれ背負わなくていいから」


「何で……」


「だって、先輩、さっきからずっと泣いてるじゃないですか」



おれは驚いて自分の顔に触れた。


手のひらが濡れた。涙だ。


何だ、そうだったのか。


肺がギュッと絞られて痛い理由も、声がうまく出ない理由も、泣き声に掻き乱されて朱獣珠の訴えが聞こえない理由も、わかった。



だけど、おれはどうして泣いてんだろう?