DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―



「聞いてくれ、理仁、おかあさんを治すために朱獣珠を使いたいんだ。家族として、やり直そう」



違う。


やり直すために必要なのは朱獣珠じゃない。


だったら何が必要なのかって、ズバッと正解を出すことはできないけど、少なくとも、息子より宝珠を大事にしてるようにしか見えない親父なんか信用できなくて。



まともなおとうさんがほしかった。


おとうさんがまともになってくれるなら、ほかには何もいらなかった。


空気みたいに居心地のいいおかあさんと同じくらい、ありふれてて好きになれるおとうさんなら、最初から、ただそれだけでよかった。



何で敵対するしかなくなったんだろう?


だけど、もう、どうしようもなくてさ。