【嘘なら許せねえ。本気なら受け入れられねえ。見栄や建前のために父親を演じてるってんなら、まずは本音をさらせよ】
言葉の一つひとつにズッシリと重みを持たせて、親父めがけて投げる。ぶつける。叩き付ける。
親父は顔を歪めた。苦痛の表情。
もっと苦しめばいい。
【言ってみろよ、本当のこと。テメーのいちばん大事なモンって何だ?
何のためにおれや姉貴が悲しい思いばっかしてきたのか。何のためにおかあさんが人生を棒に振ることになったのか。
テメーが本当に愛してるモンって、一体、何なんだよ? 言えよ】
号令《コマンド》が親父にも効けばいいのに。
親父がおれの前に膝を屈するのは、おれが言霊《ことだま》使いの王さまだからじゃなくて、ただ単に親父に苦痛を与えているからだ。
鼓膜とは別のもっと奥、音じゃなくて言葉を理解するための脳ミソのどこかを、おれの声は直接ガッシリ握って離さない。
握りしめて、痛め付けて。



