DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―



「おまえが私に力を貸してくれなければ、おまえの母が死んでしまうんだ。おまえが見殺しにするんだぞ、私の妻を」


「ふざけんな」


「私はたくさんのものを持っている。成功した資産家だ。だが、どれだけ金があっても手に入らないものがある。

金と引き換えにできないほど大切なものだってある。私は、家族が形を成さなくなったことが悲しくて仕方がない」



何が「悲しくて仕方ない」だよ?


怒りがおのずとチカラを帯びて、おれの肉体を音もなくすり抜けて、獣の唸り声みたいに低く響く。



【黙れ】



でも、親父の長広舌がやまない。



「帰ってきなさい、理仁、リア。そして理仁、朱獣珠に願うんだ。おかあさんが健康な姿でうちに帰ってきてくれることを。

家族として、やり直していこう。今なら取り戻せるはずだ」